パイロットのフライトバッグの中身

最終更新日 2021年1月30日

パイロットが空港でキャリーケースを何個も転がしながら移動しているのを見かけた事があると思います。たいていはフライトに使用する道具が入ったフライトバッグと、宿泊用の個人的な荷物を入れたスーツケースです。パイロットのフライトバッグの中には何が入っているのでしょうか。

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フライトバッグ

パイロットが使うフライトバッグは、コクピットで操縦席の隣に置いて使用します。ですので、上部が開くようになっており、横に置いた状態から中身が取り出しやすくできています。車輪のついたものもあり、書類などで重たくなりがちなフライトバッグの持ち運びに便利です。

運航マニュアル

パイロットがフライトで使うマニュアルは3つに大別できます。乗務する飛行機に関するマニュアル、勤務する航空会社での運航について定めたマニュアル、そしてルートマニュアルと呼ばれる航空路や各空港での運航方式が書かれたマニュアルです。
ルートマニュアルは航空会社では主にJeppesen社が発行しているマニュアルを使用するのが一般的です。その他にも国が公式に発行しているものもあり、誰でも閲覧することができます。気になる方はAIS JAPANというサイトを見てみてください。航空路やアプローチチャートなどの他に、AIPと呼ばれるフライトに必要な情報や、NOTAM(航空情報)と呼ばれる空港の工事に関する情報を得る事ができます。

ルートマニュアルは就航している空港が全て収録されており、たいていは地域別に発行されています。日本、アジア、ヨーロッパ、北米などです。各マニュアルは1冊で10㎝近くの分厚さで、例えば多くの地域を通過するフライトではその分準備していくマニュアルも多くなるのでフライトバックもかなりの重量になります。

なお最近ではマニュアルの電子化も進んでおり、全てが紙というわけではありません。

ヘッドセット

ヘッドセットはスピーカーとマイクが一体になっているものを使用します。操縦しながらでもマイクを持つ必要が無く、管制官との通信や客室などと容易にやりとりができるようになっています。なお、コックピットではパイロットは管制官との通信用の無線2~3つ(管制通信、緊急通信、予備やデータ通信)、整備士との会話、客室乗務員との会話、アナウンスなどを同時にモニターしています。

手袋

パイロットの手袋のイメージは白い手袋でしょうか。空港でコクピットに向かって手を振ると、白い手袋をはめたパイロットが手を振り返してくれるでしょう。
この手袋は特に決められてはいませんが、革でできているものがよく使用されます。汗をかいたときに操縦桿から手が滑るのを防ぎます。ただ、無くても操縦できないというものではありません。

ライセンス

パイロットは操縦時にライセンスの携行が義務付けられています。
操縦士の技能証明書、身体検査証明書、無線従事者技能証、パスポートなどを携行します。

フラッシュライト

夜間、出発前の機体の外部点検時、その他緊急時の機内でも使用できるようにフラッシュライトを携行しています。コクピットにも備え付けのものがありますが、緊急用なので各自携帯しています。

サングラス

上空で太陽光を遮るものがないコクピットではとても眩しいのでサングラスは必需品です。地上では曇りや雨でも、雲の上に出るといつも晴れです。飛んでいる方向によっては常に前方に太陽があることもあります。長距離国際線では長い間つけていることになります。これも特に決まっていませんが、ブラウン系よりもグレー系の色のものがコクピットの計器も見やすくて良い気がします。

お菓子

コクピットではパイロットは好きな時に食事ができない事が多々あります。血糖値が下がって大切な時にパフォーマンスが落ちないように、チョコレートなどをフライトバックに入れていてる方もいます。

フライトバックの整理整頓

飛行機を操縦している時は時間の余裕がない事がたくさんあります。自動操縦も常に使用可能とは限りません。自分のフライトバッグの中は、見なくても手探りでだいたいどこに何が入っているか、どのマニュアルにどの辺りに必要な情報があるのか把握しておき、すぐにアクセス可能な状態にしておくことが大切です。これは机の上が散らかっていると、頭も整理されていない状態で、必要なものを必要な時に取り出せないのと似ています。


 

”簡単なことを完璧にやる忍耐力の持ち主だけが、いつも困難なことを軽々とこなす熟練を身につける。”

- シラー - (ドイツの詩人、歴史学者、劇作家、思想家)