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航空教室

緊急事態で使うMAYDAYとは

最終更新日 2021年3月12日

映画などで飛行機が緊急事態におちいった時、「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY(メーデー、メーデー、メーデー)」と言っているのを聞いたことがあるでしょうか。今回は緊急事態のときに使用される、遭難通信/緊急通信と呼ばれるものについてご紹介します。

緊急事態とは

緊急事態(Emergency)とは一般に、健康や生命および財産あるいは環境に危険が差し迫っている緊急の状態のことをいいます。

飛行機の世界であれば、エンジンや車輪の故障、火災、燃料の不足、機内与圧の喪失、電気系統や油圧システムの不具合などが考えられます。また搭乗している乗務員や旅客が意識不明になるなどの状態も緊急事態といえるでしょう。小型機の場合には、急激な天候の悪化により、飛行の継続が難しくなった場合や、自機の場所が分からなくなった場合なども該当します。

緊急事態の場合の無線通信

緊急事態におちいった航空機は、無線で交信するときに、緊急事態であることを示すために、通信の冒頭に「MAYDAY」もしくは「PAN-PAN」を3回繰り返して付けます。
「MAYDAY, MAYDAY, MAYDAY, Tokyo Control, United123, …」のような感じです。

旅客機であれば常にどこかの管制機関と通信が保たれている状態ですので、これを聞いた管制機関は直ちに援助する体勢に入ります。

無線は電話とは異なり、複数人が同時に聞くことはできるのですが同時に話すことができません。つまり同じ周波数であれば一度に一つの無線局しか送信できません。同時に複数の無線局から送信しようとすると、混信して全ての送信が雑音となます。

ですから、遭難通信を聞いた他の航空機は、その遭難通信を邪魔しないように、黙っている必要があり、状況に応じて通常の無線通信は他の周波数で行うように指示される場合があります。

航空の世界では、緊急事態になった場合、Emergency(エマージェンシー)という言葉は用いずに、その緊急度合いに応じて、遭難通信:MAYDAYと、緊急通信:PAN-PANが使い分けられることになっています。

遭難信号:MAYDAY


遭難(Distress):深刻かつ/または差し迫った危険があり、即時の援助が必要な状態。

緊急事態のなかでも重大なものの場合を「遭難(Distress)の状態」といいます。不時着の可能性が高い状況や飛行場に着陸後に消火・救難が必要な場合などです。

遭難の状態におちいった飛行機のパイロットは、遭難通信「MAYDAY」を送信します。

緊急信号:PAN PAN

緊急(Urgency):航空機や他の乗り物、または搭乗者または視認した人に安全上の問題が発生している状況だが即時の援助は必要のない状態。

緊急の状態となった飛行機のパイロットは緊急通信「PAN-PAN」を送信します。

この緊急通信でも管制官から優先的取り扱いが受けられるかどうかは国によって異なりますが、日本では「MAYDAY」でも「PAN-PAN」でも管制上の優先的取り扱いが受けられます。

緊急用周波数121.5MHz

遭難/緊急通信は、その時使っていた周波数で送信するのが基本ですが、その他にも緊急用周波数というものを使用することもできます。

緊急用周波数とは、文字通り緊急の際に使う周波数のことで、民間機では主にVHF帯の121.5MHzを使用します。管制機関と航空機はこの121.5Mhzの周波数を可能な限り常にモニターすることが義務付けられており、この周波数で発信すれば誰かが聞いています。

なお、緊急用周波数は243.0MHz、2182kHzなど他にも割り当てられています。

トランスポンダー

航空機はトランスポンダーと呼ばれる、自動応答装置を搭載しています。これに管制官から支持された4桁の番号をセットすると、管制官のレーダー卓にも同じ番号が表示され、飛行機を識別しやすくしています。

このトランスポンダーに、緊急用のコード7700をセットすることでも緊急事態におちいっていることを管制官に知らせることができます。

航空機用救命無線機 ELT: Emergency Locator Transmitter

航空機用救命無線機 ELT: Emergency Locator Transmitterとは、航空機が事故に遭った場合、その遭難地点を探知させるため遭難信号を送信する無線設備です。墜落の衝撃を感知して自動的に遭難信号を発射する自動型、水中に投げ込むことで浮上自立し遭難信号を発射する水上型、手動でスイッチを入れることにより遭難信号を発射する手動型があり、旅客機には自動型を中心として複数個搭載されています。

ELTは独特の信号音を発するので、実際にフライトをしている時に、121.5MHzで発信されたテスト中のELT信号を聞くこともあります。

実際の使用例

それでは、実際に使用されている例をご紹介しましょう。

Mayday over Denver United Flight 328

2021年2月に発生した、デンバー発ホノルル行きUnited328便のエンジントラブルの際の管制通信です。
”MAYDAY, MAYDAY, United328…”
などの管制通信が聞き取れると思います。

“勝利は、もっとも忍耐強い人にもたらされる。
ー ナポレオン・ボナパルト ー(フランス革命期の軍人・皇帝・革命家)

作成者: ふくろう機長

日系大手エアラインパイロット。
航空大学校卒業。
国内線・国際線に乗務し世界を楽しく飛び回っています。
パイロットは小学生からの夢。