ジェット旅客機の巡航速度

最終更新日 2021年1月30日

巡航高度に到達した飛行機は巡航速度での飛行に移ります。
飛行機の空中での速度はほぼ同じですが、上空の風は時速300km/hを超える風が吹く場所もあり、追い風を受けて飛ぶ場合と向かい風に抗って飛ぶ場合でも所要時間は大きく変わります。

コンテンツ

ジェット旅客機の巡航

今日のジェット旅客機の巡航速度はおおむねマッハ0.80前後です。これはその大気中の音速の80%の速度で飛行していると考えて差し支えありません。高度30000ftから40000ftではおよそ850km/hです。時速850キロメートルというと、1分間に14km以上進みますから、かなりのスピードです。

経済速度:ECON SPEED

ジェット機は経済速度(ECON SPEED)と呼ばれるものがあります。もちろん、飛行機の構造上耐えられる最大速度や、失速しない最低速度はありますので設定できる範囲は決まっていますが、飛行速度が遅すぎると燃料消費の割に飛行距離が出なくなり、早すぎると抗力が大きくなって燃費が悪くなります。また、ゆっくり飛ぶと基本的には燃費が良くなりますが、その分人件費もかかります。その他、その日の重量や風の強さ、大気の状態によっても変わってきます

大きい飛行機の方が速い

この経済速度は基本的に大きな飛行機ほど早く、小さな飛行機ほど遅くなります。日本でよく見る飛行機ですと、エアバスA320やボーイング737などの飛行機は巡航速度がマッハ0.78程度、ボーイング767でマッハ0.80程度、ボーイング787になるとマッハ0.85程度となり、長距離を飛ぶほど差が出てきます。
先に出発した飛行機を上空で追い越すこともよくあります。

時速350kmを超えるジェット気流

上空にはジェット気流と呼ばれる強い西向きの風が吹いており、冬場の北半球では時速350kmを超える時があります。これは地球の大きな大気循環の影響によって生じるもので北半球では冬場に強くなります。日本の上空はこのジェット気流が強く吹く緯度帯に位置しています。

冬場、東西に飛行する路線は大きな時間差ができる

ジェット気流は中緯度帯を蛇行しながら東に向かって吹いているので、東西に飛ぶときには飛行時間に大きな差が出てきます。東京から福岡に行く場合でも往路と復路の時間は30分ほど所要時間が変わってきます。国際線ですと、東南アジアに向かう場合も往路と復路の差が大きくなります。

北米線が一番影響が大きい

一番影響の出るのが冬場、アメリカ路線を飛行する場合です。日本からアメリカ大陸やハワイに向かう場合、ジェット気流にうまく乗って飛行するルートと高度が選定されます。その逆に日本に帰る場合、ジェット気流を避けて飛行します。ですので行きは太平洋上をジェット気流に乗って飛行し、帰りはジェット気流を避けてアラスカ、アリューシャン列島付近を帰ってくることが多くなります。例えばサンフランシスコ線では往路が9時間30分、復路が11時間30分と3時間も違うのです。
夏場は北半球のジェット気流も落ち着いてくるので、大圏コースに近いルートになります。

ヨーロッパ路線も東西に飛行しますが、ヨーロッパ路線が通常飛行するシベリア上空は緯度が高く、ジェット気流は冬場でもそれほど強くありません。ですので、行き帰りの差は1時間程度です。

日本からオーストラリアに飛ぶは南北に飛行するので、差はほとんどありません。

北米・ハワイ行き路線は揺れやすい

さて、この冬場の強いジェット気流を利用して飛行する場合、所要時間を大きく短縮できますが、実はメリットばかりではありません。
時速350kmを超えるような風が吹いているということは、その分大気も乱れやすく、非常によく揺れます。高い高度に上がれれば比較的穏やかな場合が多いですが、機体の重量が重かったり、混雑していて希望の高度を飛行できなかった場合、またボーイング777などはボーイング787などと比べて翼の性能の違いなどにより高い高度に上がりにくくなっています。
パイロットは危険な乱気流が予想されている場合にはあらかじめ避けて飛行しますが、日本発の北米線はジェット気流の影響で揺れに遭遇しやすい路線になっています。
パイロットの仕事はジェット気流の立体構造を把握し、少しでも安全に快適なフライトを提供することにあります。

”びっくりするような好プレイが、勝ちに結びつくことは少ないです。確実にこなさないといけないプレイを確実にこなせるチームは強いと思います。”
- イチロー - (日本の野球選手)