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パイロットの世界 航空教室

ジェット旅客機の巡航高度への上昇

飛行機は空港のあるターミナルエリアを出ると航空路へ会合するために上昇していきます。通常、旅客機の巡航高度は29000ftから41000ftです。

SID:空港から航空路へ

空港を離陸した飛行機は、通常SID(Standard Instrument Departure:標準計器出発方式)と呼ばれる方式に従って航空路まで飛行します。例えば、羽田空港から西日本方面に向かう場合に使用するYANAG DEPARTURE。離陸滑走路は北風の時がRunway05、南風の時がRunway16Rからの離陸となります。

YANAG DEPARTURE

Waypointとよばれる各地点には速度や高度の制限が設けられています。このYANAG DEPARTUREの場合BAYGEやYANAGと呼ばれるポイントに高度制限があり、米軍の横田基地の空域と干渉しないように9000ftや13000ft以上で通過するように定められています。

速度制限

空港周辺には通常、半径5マイル高さ3000ftの管制圏と呼ばれる空域がありその中では、200ノットの速度制限があります。

管制圏を出ると今度は進入管制区と呼ばれる空域に入ります。大空港の周辺に設定されており高度10000ft以下のところが多くなっています。そこでは最高速度は250ノットに制限されています。無線通信も管制塔から出発管制を担当する管制官に切り替えが指示されます。

上昇速度

10000ftを超えると飛行機はいよいよ巡航高度へ向けて上昇を続けながら加速していきます。ジェット旅客機の巡航速度は、機種やその時の重量によって異なりますが、およそマッハ0.8、音速の80%くらい、約850km/hのスピードです。
ジェット機はおよそ30000ftまではkt(ノット)と呼ばれる速度で飛行し、それよりも高い高度ではマッハ数で飛行します。

巡航高度が40000ftくらいの場合、羽田空港を離陸した飛行機はその高度に到達する頃には名古屋の手前くらいまできています。時間にして20分強といったところです。

計器飛行方式:IFR

旅客機は通常、計器飛行方式:IFR(Instrument Flight Rules)と呼ばれる方式に従って飛行しています。もう一つの飛行方式は、有視界飛行方式:VFR(Visual Flight Rules)と呼ばれるもので、例えば小型機の遊覧飛行は主にこの方式に従って飛行しています。IFRはおおまかに言うと、常に管制官の指示に従って飛行する飛行方法です。この方法によって飛行している場合、雲の中などで外が見えない状態でも管制官が他の航空機との間隔を取ってくれます。つまり気象条件の制約を受けずに飛行することができます。パイロットは外が見えている状態では、外部を監視していなければならないという法律があります。

QNHとQNE

飛行機の高度計のセットの仕方にもいくつか種類があります。
空港周辺の比較的低高度ではQNHと呼ばれる値で気圧を補正します。地上の気圧はその地点によって異なるため、地面に近づいた時に空港の標高と誤差を小さくするためです。

高高度では標準気圧面からの高度で飛行します。高速で飛行する航空機が通過する地点ごとに高度計を補正するのは大変ですし、広い洋上などQNHが手に入らない事もあるためです。
離陸上昇中は、各国ごとに決められた高度でQNHからQNEに切り替えます。日本では14000ftです。北米などは18000ftなど日本より高くなっていますし、ヨーロッパ諸国は5000ftなど低めの高度に設定されていることが多いです。

上昇中にパイロットが考えている事

まず空港の周辺には他の航空機がたくさんいるため、ぶつかったりニアミスしないように外や計器をモニターしています。空港から航空路への経路は上昇中は、各速度制限や高度制限を守りながら上昇・加速する事に加えて管制官との無線交信もあり、ワークロードの高い時期です。なお、各制限を守れるかどうかは、プロのパイロットは事前に、その日使用する機体の重量やSID、気象状況などを検討してきているので、離陸する前にはどのくらいの性能余裕があるか把握しています。
離陸直後は高度が低い分、機体やエンジンに故障か発生した場合の余裕も少なくなりますので、エンジンやその他のシステムの作動状況もモニターします。

上昇中、特にジェット気流が強く吹く季節や空域を通過する場合、大きく揺れるエリアがあることが多いので、客室乗務員やお客様の安全性と利便性を考えて、どこでシートベルトサインを消灯させるかも常に頭の中にあります。

 

”成功するために大切なのは、どこから始めるのかではなく、どれだけ高く目標を定めるかである。”

- ネルソン・マンデラ - (南アフリカの政治家、ノーベル平和賞受賞)

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作成者: becomeapilot

日系大手エアラインパイロット。
小学校の頃に家族旅行で飛行機に乗って以来パイロットの仕事に憧れてきました。
航空大学校を卒業後に就職。
国内線・国際線に乗務し世界を楽しく飛び回っています。

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