私立大学のパイロット養成コース

最終更新日 2021年3月17日

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私立大学のパイロット養成コース

現在日本において旅客機のパイロットを目指す道として私立大学のパイロット養成コースも徐々に認識されてきました。東海大学、桜美林大学、法政大学、崇城大学などでパイロット養成コースが設定されています。ここを卒業し就職試験を受けて航空会社に就職できるプログラムで、卒業時には航空大学校を卒業した場合と同じライセンスが得られる仕組みです。パイロットを目指す人がこの私立大学のパイロット養成コースを志望するにあたって考慮するべきことを一緒に考えてみたいと思います。

費用

何といってもまず学費の高さがネックになります。まず第一に考慮すべき航空会社各社の自社養成や航空大学校と比べて費用面で非常に高額になっていて、一般の家庭では負担するのが難しい場合が多いと思います。公表されている資料では、東海大学、桜美林大学、崇城大学で約2000万円、法政大学は3000万円程度の費用がかかるようです。
最近ではJALが「日本の翼育英奨学金」を一人当たり500万円支給したり、国土交通省も希望者に1000万円の貸与を行っていて、費用面でのハードルは徐々に低くなってきているようです。
さらに国土交通省は、将来のパイロットの養成・確保に向けて、私立大学を対象にした無利子貸与型奨学金「未来のパイロット」を創設すると発表したようです。2018年度から開始される予定の同奨学金は私大の桜美林大、東海大、崇城大、千葉科学大、専門学校の日本航空大学校、訓練事業者の新日本航空の6機関のパイロット養成課程の学生に対し、訓練費の一部を無利子貸与するもので、1学年当たり25人を対象に、1人当たり約500万円を貸与する制度のようです。返済期間は卒業後10年となっています。
この奨学金により学費面でのハードルは少し低くなるかもしれませんが、それでも残り1500万円から2500万円近い負担が必要です。
広く浅く貸与するのではなく、優秀で意欲のある学生に、国公立大学程度の負担で済むようにした方がお金の問題でパイロットになる夢を諦めないで済む人が増えるのではないでしょうか。
また卒業後の返済期間は10年だそうですが、大手航空会社でも副操縦士に昇格するまでは年収は多くありませんし昇格できる保証もありません。卒業後の返済計画をよく検討してから借りるべきであると思います。

就職状況

卒業後に希望の航空会社に入社できるチャンスがどれだけあるかが、高額の学費を払って私立大学のパイロット養成コースに進むかどうかの決め手となります。就職実績としては、大手のANAやJALをはじめスカイマークやピーチといった中堅、LCCへの就職実績があるようです。
もちろん高額の学費を負担するのですから、それを取り返すためにも給与水準の高い大手エアラインに就職したいところですが、実際には航空大学校からの卒業生に比べて大手に就職できる確率が低く、卒業後の進路に関しては注意が必要です。これは訓練の厳しさと学生の質に起因するところです。自社養成や航空大学校の訓練は厳しく水準が高く保たれており、訓練についていけなければ容赦なくフェイルとなってパイロットになる道が閉ざされてしまいます。会社や国のお金で訓練するのでついていけないからと言って、できるようになるまで訓練してくれません。ところが、私立大学のパイロット養成コースの訓練生は大学からみれば高い学費を払ってくれるお客様という立場です。訓練生が自分に厳しく訓練に臨まなければ卒業時に大手航空の採用試験に合格するだけの水準に達すことができないのです。

更に、航空会社にしてみれば優秀な人材を採用したいのは当然です。ですが無限にお金をかけることはできません。ではどうするかというと、訓練の費用の一部を国や学生に負担してもらって(航空大学校や私立大学)安く優秀なパイロット候補生を採用したいわけです。私立大学にたくさん人を集めても航空会社の懐は痛みませんから、なるべくたくさん集まってもらってそこから基準に合格する人材を採用しています。ただ、私立大学に大手エアラインへの採用実績が無いと学生も集まりませんから、実績を作って優秀な学生を集めるために採用実績を作るわけです。

私立大学のメリットは若くしてパイロットになれる事

私立大学を卒業してエアラインパイロットになるメリットはやはり、若くしてパイロットになれる事です。大学のカリキュラムの中でライセンスを取得して卒業するので、航空大学校よりも更に2年ほど早く副操縦士に昇格する事が可能です。日本の大手エアラインであれば、副操縦士の年収は1000万円代前半ですので、これだけで生涯年収は3000万円ほど変わってきます。上手く就職までいけば一番生涯年収が高くなるパターンです。

若いうちに高い年収を得ることは、生涯年収以上に大きな価値があります。若いうちに手にするお金の方が、歳をとってから得るお金よりも色んな有意義な事に使えるからです。

やはり自社養成か航空大学校が優先

以上のことから、大手エアラインのパイロットは自社養成と航空大学校出身者がほとんどです。日本でパイロットを目指すなら自社養成の採用試験に合格できるように頑張ってください。そしてそれが無理だったなら航空大学校を受験するのが順番だと思います。(日本でエアラインパイロットを目指すには
私立大学のパイロット養成コースは奨学金を考慮しても、相当な学費がかかり余裕のある家庭以外はまだハードルが高いように思われます。
しかしながらパイロットの不足問題、そして多額の費用のかかるパイロット自社養成の制度維持の負担の問題から今後は私立大学のパイロット養成コース出身者の採用が増えていくことが予想されます。

そして何より大切なのは自分自身の価値を高めて、どのような進路を選んだとしても採用したいと思ってもらえる人になることが大切でしょう。身体に気を付けてパイロットへの情熱を持ち続け頑張ってください。

”私は、敵を倒した者より、自分の欲望を克服した者の方を、より勇者と見る。自らに勝つことこそ、最も難しい勝利だからだ。”
- アリストテレス - (古代ギリシアの哲学者)