パイロットに必要な英語

最終更新日 2021年1月30日

パイロットになるには英語が話せないといけないイメージがあるようですが、パイロットになるのに英語はどの程度必要なのでしょうか。

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ATC : Air Traffic Communication

航空管制はATCと呼ばれますが、ここでATCのライブ放送を聞くことができます。(Live ATC.net)

ネイティブ並みの英会話は不要

パイロットが航空管制官との交信に使用するのは基本的に英語です。ただし、日常会話のような英語ではなく、あらかじめ標準用語が定められています。独特の言い方が多いのですが、例えば、
”Japan Air456, Runway 16L Line up and wait”
と言われれば、「滑走路16Lに入って離陸のために待機せよ。」
とう意味です。
これは世界共通なので、このように一度管制用語を覚えてしまえば操縦に必要な英語は問題ありません。

ただし通常とは異なる事態が発生した場合など、定められた用語ではコミュニケーションが難しい場合は、日常会話が必要になります。日本国内であれば、パイロットと管制官双方に疑義が生じないように、日本語でやりとりします。

これが国際線になると、一程度の英会話が必要です。

日本人同士が日本語でやり取りするのと同様に、例えばアメリカなど英語圏では日常会話に近い感じで通信しているところもあります。

なお、航空管制は英語での交信が基本ですが、例えば、中国などは中国人同士は中国語で管制しています。海外から来たパイロットは、他機の状況が把握することが難しいです。

マニュアルは英語

パイロットのマニュアルはどうでしょうか。
会社のマニュアルは日本語ですが、ルートマニュアルといわれる、空港や航空路のためのマニュアルはJeppsen社(現在はボーイング社の関連会社)のものを使うことが多いです。これは全て英語です。航空業界にいれば、用語も理解できますし、難しい英語ではないので問題ありませんが、最低限の英語は必要です。

受験や訓練の際に必要

自社養成や航空大学校を受験する際、また、海外での訓練プログラムがある会社ではそこでも英語能力が求められるでしょう。

試験に出てくる英語は、日常会話で必要なものと性質が異なることが多いので、受験勉強のような対策が必要でしょう。

海外での訓練する場合、飛行訓練のインストラクターとのコミュニケーションに英語が必要です。

ICAO English language proficiency

国際線を飛ぶパイロットはICAO(国際民間航空機関:International Civil Aviation Organization)基準の英語能力証明が必要です。

ICAO English Language Proficiency などと呼ばれています。
この航空英語能力証明は6段階のレベルがあり、4以上を取得しないと国際線に乗務できません。

Level 6 :Expert Level (永久ライセンス)
Level 5 :Extended Level (6年更新)
Level 4 :Operational Level (3年更新)

となっています。
管制交信のリスニングや、航空管制を模擬した英会話の実技が審査されます。

余談ですが、日本人パイロットの大半はレベル4です。
国際線に乗務するにはレベル4以上が必要ですが、本当に英語で意思疎通できる日本人は、パイロットといえども稀ですので、まともに判定をしていては国も会社も困るからでしょう。

留学経験などがあったり、自身で日ごろから勉強していればレベル5、ネイティブ並みでレベル6といった感じです。

海外の航空会社では英語は必須

なお、前述のICAO English Language Proficiecy ですが、海外の航空会社で働きたい場合にも必要です。アジアの航空会社はレベル4でも採用されるようですが、欧米系の航空会社はレベル6が基本です。レベル5でも可としているところもあります。
将来、海外の航空会社で乗務したい場合には、英会話はマストと言えそうです。

なお、人気がありそうなヨーロッパ主要国やアメリカのエアラインは、基本的に自国のパイロットを優先しているので、ビザや国籍を取得できる何等かの事情がなければ、現状は難しいでしょう。

”未来を語る前に、今の現実を知らなければならない。現実からしかスタートできないからである。”
- ピーター・ドラッカー -(オーストリア出身の経営学者)