最終更新日 2021年3月17日

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パイロットと自動操縦

現代の旅客機は自動操縦装置が装備されているのが当たり前になっています。この自動操縦装置はオートパイロットとも呼ばれ、地上走行と離陸以外はほとんどやってくれる優れものです。それも離陸後1~2分後には自動操縦に切り替え、着陸前の数分前まで自動操縦のままフライトすることが大半です。
それではパイロットはいったい何をやっているのでしょうか。

自動操縦に「操作」を任せているだけ

パイロットの仕事は飛行機を操縦することなのですが、現代の旅客機の運航においてはそれ以外の仕事、例えば飛行計画の立案や、フライトのマネジメントの仕事が大半です。もちろん、パイロットは全て手動で操縦する技量は身につけていますが、フライトの全てを手動で操縦していたのでは、それ以外の業務をする余裕が大幅に減少し安全度が下がってしまいます。そこでパイロットはオートパイロットに操縦の「操作」を任せているのです。

自動操縦の仕組み

自動操縦の仕組みは思ったより単純です。(もちろん全ての飛行機が同じでは無いと思います。)自動操縦の基本の動きは飛行機の3軸の動き(ピッチ・ロール・ヨー)のコントロールです。

飛行機の動きはこの3軸のコントロールで成り立っているので、3軸をコントロールする舵面を動かせば操縦することができます。
これに自動推力調整装置(オートスロットル)を組み合わせると飛行機を空中でコントロールすることが可能になります。
あとは、飛行したい高度や速度、経路をFMS(Flight Management System)と呼ばれるコンピュータに入力して、それ通りの飛行経路に沿って自動操縦装置が飛行機をコントロールします。もちろん、FMSに飛行経路などを入力しなくても、パイロットが自動操縦装置に所望の速度と高度などを入力することもできます。

上空ではパイロットは何をしているのか

それでは自動操縦に操縦を任せているフライトの大半の時間は、パイロットは何をしているのでしょうか。先程にもお話した通り、飛行機の操縦は「操縦操作」だけではありません。自動操縦装置がそもそもただしく作動しているかのモニター、管制官との無線通信、天候を読んで揺れの少ない高度を探す、危険な積乱雲を避けられるように調整、他の飛行機とぶつからないように外部監視、客室乗務員と機内サービスについて打ち合わせ、各国のルールに沿ってフライトできるように管理、など多岐にわたります。目的地へ進入・着陸するための計画をたてることも大事な仕事の一つです。身体を動かすことは少ないのでぼーっとしているように見えますが、頭はフル回転して次はどうするかと常に考えて運航しています。

自動操縦では離陸・条件が悪い中での着陸ができない

自動操縦装置はたいていの場面での自動着陸が可能です。特に霧が出ていたりして滑走路がほとんど見えない状況でも自動着陸装置なら安全に着陸することができます。しかし、台風の時など、風が強いときには自動着陸装置の限界を超えてしまうので、パイロットが手動で着陸操作を行います。
また技術的には自動離陸や自動地上滑走も可能ではあるのですが、特に離陸の段階での中止・継続の一瞬の判断はまだ人間にしかできません。急に前方に他の飛行機が飛び出してきたり、装置の故障など、離陸の段階では滑走路に余裕がないので迅速な判断が必要とされます。将来的には人工知能やセンサーの発達が安全な離陸を可能にするかもしれませんが、現時点では実用段階にありません。

自動操縦を有効活用している

以上のようにパイロットは自動操縦をうまく使いこなして安全性を高めています。機械に任せた方がよい部分、機械の方がうまくできる部分は機械に任せて、パイロットは人間にしかできない部分を担当することでフライトの安全を高めているのです。

”選択するということは優先度をつけることであり、エネルギーの分散を極力避けることである。”
- 利根川進 - (日本の生物学者、ノーベル生理学・医学賞受賞 )