高高度で窒息しない理由

最終更新日 2021年1月30日

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1万メートル上空

旅客機が巡航する高度は10000m~12500mくらいの上空です。地上で10km移動しても環境はほとんど何も変わりませんが、上空に10km上昇すると、地上では想像できないような厳しい世界です。気温はマイナス50度以下、空気もとてもうすくて酸素が十分無く、意識を失うのに1分とかかりません。冬場の日本の上空はジェット気流が時速300kmを超える速度で吹いています。とても人間は生きていられないような過酷な環境です。

飛行機が発明された頃は飛行高度も低く、高高度における飛行による問題も発生しませんでしたが、飛行機が高性能になるにつれて速く、高く飛べるようになり、搭乗員が低酸素症や凍傷に悩まされ始めました。

普段、飛行機に乗って旅行しているとそんな環境が窓のすぐ外にあるようには感じられませんが、上空はとても過酷な世界です。それでも我々が快適に旅行できるのは、飛行機に与圧システムという仕組みが装備されているからです。この仕組みのおかげで旅客機内の気圧高度は2000m前後に保たれています。これは富士山の5合目程度の空気の薄さと同じといえます。

与圧システム

高高度の過酷な環境から搭乗員を守るために最初に導入されたのが酸素マスクです。しかし酸素マスクをつけていては行動も制限され快適ではありません。そこで登場したのが与圧システム(Cabin Pressurization System)と呼ばれる装置で、1930年代に実験に成功しています。
このシステムは簡単に言えば、大量の空気を機内に押し込んで、出ていく空気の量を調節することで機内の圧力を上げて、地上に近い気圧の環境を維持しようとする装置です。機内に取り入れる圧縮空気はエンジンで圧縮した空気や、ポンプで圧縮した空気を機内に取り入れます。飛行機の側面や下方に弁があり、出ていく空気の量はこの弁の開き具合で調節しています。
ちなみにこの弁が壊れてしまっても飛行機が破裂しないように、ある一定の圧力以上になると開く安全弁もついています。

また飛行機は内側からの圧力には大きな力に耐えられますが、外からの圧力にはとても弱い構造です。ジュースのアルミ缶が中の炭酸飲料の圧力には強いのに、外から持つとすぐへこんでしまうのに似ています。
ですので、外からの圧力がかからないように、すなわち客室内が負圧にならないような安全弁も装備されています。

ちなみに飛行機の中がとても乾燥するのは、機内に取り入れている上空の空気の水分量が非常に少ないからです。飛行機に長時間乗るときには水分をよくとって、保湿剤なので肌をケアするのがおススメです。

”自分に能力がないなんて決めて、引っ込んでしまっては駄目だ。なければなおいい、今まで世の中で能力とか、才能なんて思われていたものを越えた、決意の凄みを見せてやる、というつもりでやればいいんだよ。”
- 岡本太郎 - (日本の芸術家)