最終更新日 2021年3月22日

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パイロットの年収

パイロットという職業を選択した場合どんな生活が待っているのでしょうか。職業を選択するにあたっては、人それぞれ非常に様々な基準がありますが、待遇も生活していく上でひとつの重要な要素といえます。今回はパイロットの賃金体系についてご紹介したいと思います。

パイロットは一般的にみれば高収入だといえるでしょう。職業別年収ランキングにも毎年トップクラスの収入を得られる職業として紹介されています。もちろん自分でリスクをとって起業している人などに比べれば、パイロットは企業に勤務している従業員である以上、一定の範囲の収入です。しかし、一般的な従業員の中では恵まれた待遇であるといえます。
厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査によると平成27年度の一般労働者の賃金の月額平均は、男女計304,000円(年齢42.3歳、勤続12.1年)だったそうです。それに対してパイロットは15,232,00円、(年齢45.7歳、勤続20.9年)。更に資料の時期は異なりますが、ある年の有価証券報告書を見ると、JALでは年収1690万円、ANAでは1930万円と公表されています。これは一般的に高収入と認識されている勤務医などと比べても高額だと言えるでしょう。

余談ですが、パイロットは一般的に残業といわれるような時間外労働をほぼ行っておりません。パイロットの仕事は、担当の便が到着するまでですので、仕事が終わらないから帰れないといったことが無いのです。もちろんフライトの前には出発地や目的地の空港特性の研究や当日の気象状態、就航国においての規則の確認など、フライトの準備がありますし、自宅で仕事の勉強をする時間は長いですが、それでも一般的な仕事と比較すると労働時間は短いと思います。

年収はANAやJALなどの大企業に所属するかどうかでも変わってきます。例えばスカイマークでは年収750万円と公表されています。国際線などの身体の負担の大きい路線を飛ぶかなどにもよって変わるので一概には言えませんが、高年収を望むのであれば大手への就職を目指すのがよいでしょう。
ただし、パイロットは世界的にみても不足しており、今後待遇が改善されてくるかもしれません。LCCでも機長になれば少なくとも1000万円は支給されます。
パイロットが不足していると申し上げましたが、実際にニュースでも操縦士の不足により路線休止を余儀なくされる航空会社も出てきました。そのため航空会社間のパイロットの争奪戦も起きており、パイロット獲得のため年俸4000万円~5000万円くらいの条件を提示されるケースも聞きます。ただし、これは海外の航空会社に勤務となる上、日本のように終身雇用の契約ではないのでその分のリスクがある契約といえるでしょう。
今後、人工知能などの技術革新が進んで旅客機の運航に必要なパイロットの数が減らない限り、需給の引き締まった情勢が続くものと思われます。

長い訓練と資格維持の大変さ

パイロットとして航空会社に採用されたからといってすぐに上記のような給与が支給されるわけではありません。パイロット候補生はまず他の社員と同様に色々な部署に配属され社会人としての経験を積んでいきます。初任給は20万円程度で、訓練生時代は毎月このくらいです。
旅客機のパイロットとして乗務し始めるまでの訓練はとても長く、新卒で自社養成パイロットとして採用された場合、副操縦士として昇格するまで入社から4~5年程度はかかります。長い訓練を乗り越えて副操縦士として乗務し始めると大手では1000万円を超える給与が支給されます。
また、データでも分かるように機長になると2000万円近い年収になります。更にベテランの機長ともなると3000万円に近づいてきます。しかし、大手航空会社の機長になるためには副操縦士として更に10年近くの経験と修行が必要になります。

旅客機のパイロットとして乗務し続けるためには定期的に技能審査や航空身体検査に合格し続ける必要があります。時差のある地域へのフライトや徹夜などの不規則な勤務が続く中での体調管理は想像以上に大変です。

賃金体系

パイロットの給料は日本の航空会社であれば、基本給は他の社員と変わらないところが多くなっています。そこに乗務手当や職務手当、深夜勤務手当などが加算されていきます。ですので、自分が乗務する飛行機によって収入が変わってくることがあります。長距離国際線をメインに飛ぶ大型機への乗務をしている時期であれば、それに応じて勤務時間や乗務時間も多くなりますので、比例して報酬も増えていきます。

日本の航空会社の場合、乗務スケジュールを会社が決める場合が多く、乗務時間を自分でコントロールすることが難しいので、その月のフライトタイムに応じて支給される乗務手当も自分ではコントロールしにくくなっています。ですので、毎月数十万円ほど給与が違うことがあります。

また日本の航空会社の場合は、乗務する飛行機の機種を自分では選べないことが多く、会社の事業計画に沿って乗務する機種が決まります。このため収入が高い傾向にある長距離国際線をメインに飛ぶ大型機に乗ることができるかどうかはその時の情勢次第です。

生活

年収1000万円という数字はよく目標にされる数字だと思いますが、その生活はどのようなものでしょうか。
年収が1000万円といっても、累進課税が導入されている日本では年収が高くなるにつれて税金や社会保険料も上がり手元に残るのはその7割くらいのイメージでしょうか。更に2000万円を超えてくると、働いても手元に残る報酬は半分くらいで、あとは税金として納めることになります。

贅沢をしなければ十分な暮らしができますが、全くお金の心配をしないで良いほどの生活はできないと思います。

また生活に関して言えばパイロットは国の法律によって月の乗務時間の上限が定められています。これは言い換えると、それ以上は働くことができないということです。安全のために過重な労働が禁止されているのです。年間休日数もしっかり定められています。このため、仕事ばっかりで余暇がほとんど無いといった状況にはならないでしょう。年収1000万円でも2000万円でも高収入を得ている人の中には忙しすぎて使う時間が無いという人もいます。パイロットは報酬の割にはワークライフバランスが良いといえ、趣味や家族と過ごすための時間は十分に取ることできます。これは時間当たりの労働単価が高いということで、厚生労働省の賃金構造基本統計調査からも読み取ることができます。(パイロットの乗務スケジュール)(パイロットの結婚生活

独立できる可能性は低い

さて、パイロットの恵まれた給与体系をお伝えしましたが、ひとつデメリットを考えると、パイロットの免許である事業用操縦士や定期運送用操縦士のライセンスでは独立することが難しいと思います。弁護士や医師、税理士や司法書士をはじめ難関である資格を持っていれば、雇用されるという選択肢のほかに独立するという選択肢も考えられます。もちろんリスクもありますが、独立すれば自分の能力と努力次第で収入には限界がありません。

独立は難しいかもしれませんが、2000~3000万円近い給与所得が安定して得られる職業はサラリーマンの中でもトップクラスなので、個人の信用は大きいと思います。言い方を変えれば、金融機関から融資を受けやすいということです。これは自宅の購入をはじめ、何かのために軍資金が必要な場合やその他お金を借りたい場合に有利になるでしょう。

職業としてのパイロット

もちろん全ての仕事は尊いもので、給料の高い安いでその仕事の価値を測ることはできませんが、その人に支払われる報酬というのは、その人が社会に対してどれだけ価値を提供したかに比例する部分があるのではないでしょうか。報酬が高いということは、それだけ他の人を幸せにしたり、また仕事の内容が大変だったり、なるのが難しかったりするという事でしょう。報酬の高さだけでパイロットという職業を選ぶと、定年まで続く訓練や資格維持、健康管理の大変さについていけず、結果として幸せな人生を送ることができなくなることも考えられます。
逆に飛ぶのが好きだったり、飛行機が好きだったり、パイロットとしての仕事の内容にやりがいを見いだせるようなら、きっと最高の職業人生を歩めることでしょう。私もフライトの準備や、フライトをしている時はとても充実した時間を過ごしています。本当に恵まれた職業に就くことができて感謝しています。(パイロットのやりがい

”ビジネスで成功する一番の方法は、人からいくら取れるかを、いつも考えるのではなく、人にどれだけのことをしてあげられるかを、考えることである。”
- デール・カーネギー - (米国の実業家、作家)